一般社団法人 日本スポーツマンシップ協会

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資格者一覧

Awards 2023

日本スポーツマンシップ大賞2023
~優れたスポーツマンシップを発揮した個人・団体を表彰~

「日本スポーツマンシップ大賞/Japan Sportsmanship Awards」は、尊重・勇気・覚悟を備えたよきスポーツマンとしての振る舞いや、よきスポーツマンシップを示した個人・団体などを表彰する取り組みです。単なる勝敗を表彰するだけではなく、こうした事例にスポットライトを当てることで、スポーツマンシップの普及・啓発を進める上で、スポーツに取り組むべき姿勢やスポーツを愛するみなさんがめざすべき、スポーツマンという存在の意義・価値がよりわかりやすく伝わることを期待します。

 

受賞

グランプリ

小平 奈緒

長田洋平/アフロスポーツ

ヤングジェネレーション賞

小田 凱人

写真:SportsPressJP/アフロ

特別賞

湘南アルタイルズ

 

ノミネート

日本スポーツマンシップ大賞 ノミネート

大 賞  

小平 奈緒

写真:長田洋平/アフロスポーツ

テーマ 4度目の挑戦でたどり着いた真のオリンピックの価値
内容 2018年の平昌オリンピックでは、500mでオリンピックレコードで滑り終えると、大きく湧くアリーナのファンに向けて、次に滑走する選手たちに集中させてあげてほしいというジェスチャーを見せた。金メダル獲得が決まった直後には、ライバルのイ・サンファ選手(韓国)を抱きしめ、互いの健闘を称え合うGood Winnerぶりを発揮した。そんな小平奈緒選手だが、2022年2月に開催された北京2022オリンピックでは、大会直前のケガも影響し、連覇を狙ったスピードスケート女子500mでは17位、1000mでも10位と、ともに入賞を果たすことすら叶わななかった。そんな失意の中でも、レース後には同組で滑った銅メダリストと手をつなぎ互いを称え合ったり、メダルを獲得した髙木美帆選手を称えたりして、Good Loserの振る舞いを見せた。
オリンピックについて「私にとってのオリンピックは、自分自身の成長を確認する場所であり、周囲の皆さんと歩んできた道のりを包み込むような場所であり、世界中の競い合う仲間たちとつながる場所であり、応援してくださる皆さんとつながる場所であり、そして、一番大好きなスケート自体とつながる場所である、そう感じています」と語り、またスポーツの意義については「スポーツには本当に残酷な局面もあります。いろいろな見方ができることを感じとっていただくのもすごく大事だと思っています。私自身、どう伝えていくのが本当に良いのかよく分かっていないんですよね。だからこそ、スポーツの意義は何だろうとこれからも考え続けていくと思うのですが、その思考を巡らせる上でも今回のオリンピックは本当に貴重で大切な機会だったと思っています」と答えている。
2022年10月、現役を退いた後も、スポーツの魅力・価値を発信する語り部としてSNSでも積極的に投稿し続ける小平さん。2022年9月以降、ただ「楽しむ」のではなく、さまざまな苦難を受け入れ「心」を「前」向きにして「愉しむ」という意味の「愉」を使って投稿し続けている。
競技 スピードスケート
評価 尊重◎/勇気◎/覚悟◎
選考理由 近代オリンピックの父ことピエール・ド・クーベルタンも、結果以上に「いかによく戦ったか」という内なる戦いのプロセスや、戦った者同士が互いを認め合い親交を深めること大切だと説いている。栄光をつかんだ平昌オリンピック、思い通りの結果が得られなかった北京オリンピック、その他どんな場面においても、小平さんは「スケートに関わるすべての仲間たちと称え合いたい気持ちをつねに持っています」と話し、自身の言動でそれを示してきた。小平奈緒が示すリスペクト(尊重)の精神、スポーツの価値を言語化して発信する勇気、つねに貪欲に挑戦しうまくいかないことをも含めて受け入れ愉しむ覚悟。「将来、オリンピックをめざす子どもたちやスポーツに取り組む子どもたちに、スポーツを通して学ぶことの愉しさを伝えたい」と語る彼女の姿勢こそ、オリンピックの理念「オリンピズム」を体現するオリンピアンとして、そしてスポーツマンとしてのロールモデルだといえよう。
阪長 友仁
NPO法人BBフューチャー 理事長

テーマ 高校野球プレーヤーの未来にフォーカスしたリーグ戦「LIGA AGRESIVA」を全国展開
内容 筒香嘉智選手、森友哉選手など、数々のプロ野球選手を輩出している堺ビッグボイーズの中学部監督であり、NPO法人BBフューチャー理事長を務める阪長友仁氏。日本スポーツマンシップ協会認定のスポーツマンシップコーチでもある阪長氏が展開する「LIGA AGRESIVA(リーガ・アグレシーバ)」は、春夏秋に行われるトーナメントの大会とは別に、全国各地で行われる「選手たちの未来にフォーカスした」リーグ戦形式の取組みである。
阪長氏がドミニカ共和国で野球を学んだ際に「リーグ戦形式こそが世界の主流である」という事実に気づき、リーグ戦のメリットを高校の現場にも伝えるべく、高校野球リーグ戦を始めたのがこのLIGA AGRESIVAのきっかけとなっている。負けたり失敗したりしても再挑戦できる機会が担保されているリーグ戦の中で、球数制限を設けたり、木製バットや低反発金属バットの使用のみを認めたりすることで未来あるプレーヤーの安全を守り、より多くのプレーヤーに機会を与えることで勝利至上主義からの脱却をめざす(決して勝利をめざさないということではなく、勝利「至上」主義=勝ちがすべてという問題に挑む)。トーナメント方式が主流の野球の世界に、成功や失敗を繰り返しながらチャレンジできる「リーグ戦」のシステムを構築するとともに、日本スポーツマンシップ協会によるスポーツマンシップ講習を義務づけたり、また試合後には両チームのアフターマッチファンクションを設けたりするなど、「目先の勝利」ではなくプレーヤーの未来を見据え、野球を通じた人間力育成に注力する取り組みである。
2015年大阪府内の高校6校でスタートしたが、2022年には全国20地域およそ120チームにまで広がりを見せ、なおその共感は拡大しつつある。
競技 野球
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 野球を通して、スポーツマンを育てる環境を整えるのがLIGA AGRESIVAの挑戦だ。競技人口の減少傾向が進む野球界にあって、既成概念からの脱却を図る一石を投じるチャレンジであり、子どもたちの将来を尊重する、覚悟をもった取り組みである。そしてその挑戦が、多くの高校野球監督、同志の共感を呼び、今では全国的に大きなムーブメントとなりつつある。アフターマッチファンクションをはじめ、他競技の参考事例なども柔軟に取り込みながら、子どもたちの未来、そして野球界のよりよい未来を見据えて推進するこの取り組みは、「スポーツマン」を育むためのスポーツマンたちによるムーブメントだといえよう。
サッカー男子日本代表

写真:森田直樹/アフロスポーツ

テーマ 世界を驚かせたワールドカップでの勝利への覚悟
内容 2022年11月、カタールで開催されたFIFAワールドカップに7大会連続出場を果たした森保一監督率いる日本代表、SAMURAI BLUE。グループステージはE組となり、ワールドカップで過去優勝経験のある、優勝候補ドイツ、スペイン、そして、過去にWCベスト8の実績もあるコスタリカと対戦することとなった。この抽選結果を受け、日本では「死の組」とも言われたが、国際的な前評判としては、世界的に活躍するタレントを揃え、圧倒的な強さを誇ると見られたドイツ、スペインの2チームが「順当に」勝ち上がる組であろうと思われていたのも事実であった。そのような中でも、日本代表の選手・スタッフは誰一人勝利を信じて疑っていなかったという。
迎えた初戦、日本代表は、ドイツを相手に、2-1の逆転勝利によるジャイアントキリングを起こし、世界中を驚かす。続く2戦目のコスタリカ戦では0-1で敗北を喫してしまうが、3戦目となるスペイン戦に2-1で勝利し、グループE首位通過となり、ノックアウトステージ(決勝ラウンド)進出、ベスト16入りを果たした。とくに、スペイン戦で2点目を演出した「三笘の1mm」と呼ばれる三笘薫選手から田中碧選手へのアシストとなるセンタリングは、大きな話題となりSNSでも世界中に拡散された。まさに「諦めない気持ち」の大切さを世界中に知らしめるプレーだったといえよう。
残念ながら決勝ラウンド1回戦となったクロアチア戦では1-1の同点のまま120分を戦い、PK戦までもつれ込んだものの敗退。森保一監督が当初より目標として公言していた「ベスト8」にはあと一歩届かなかったが、日本代表の戦いは日本のみならず、世界中のサッカーファンが大きな驚きと賞賛をもって受け入れた。
競技 サッカー
評価 尊重◯/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 選手一人一人が強い「覚悟」を持ち、そしてピッチ上で「勇気」を持って挑戦した結果、欧州強豪2カ国からジャイアントキリングといっていい大金星を収めることができたといえよう。「三笘の1mm」は、最後まで諦めずボールを追いかけ、勝利をめざす、チームの姿勢の象徴的なプレーだったといえよう。また、「Bravo!」とチームメイトのプレーを称え鼓舞し合う様子をはじめ、ロッカールームの清掃、日本人サポーターたちによるスタジアムでの自主的な清掃活動なども含めて、グラウンド内の相手や審判のみならず、大会に関わる全ての人々へのリスペクトを忘れない立ち居振る舞いも日本人全体が高い評価を受ける誇るべきスポーツマンシップの一端である。
友成 晋也
一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

テーマ 「アフリカ55甲子園プロジェクト」野球による人づくり
内容 日本スポーツマンシップ協会認定のスポーツマンシップコーチでもある友成氏、1996年に国際協力機構(JICA)の職員としてガーナで働き始めて以来、アフリカでの野球の普及に力を入れてきた。
ナショナルチームのコーチも務めたガーナを筆頭に、タンザニア、南スーダンと3カ国で野球を指導。2019年には一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事を立ち上げ、「アフリカ55甲子園プロジェクト」と銘打ったアフリカでの野球の普及活動を本格化させた。この55という数字は、アフリカの55カ国・地域に野球を広めたいという想いによるものであると同時に、同プロジェクトのエグゼクティブ・ドリーム・パートナーを務めるMLB・ニューヨークヤンキースで活躍した元メジャーリーガー・松井秀喜さんの背番号でもある。
アフリカ55甲子園プロジェクトの目的は、野球を活用した人づくり。「人づくり野球教本」を英語で作成し、人づくり野球教育セミナーをアフリカ各地で開催している。例えば、アフリカンタイムと言われるような時間のルーズさに対して、「なぜ、時間通りに集まらなければならないのか」を「野球は予測、準備、確認のスポーツだ。時間通りに来ることは、野球の一番初めの練習のようなもの。野球がうまくなるために、まずは時間通りに練習に来よう」と野球に変換し伝えている。
2022年12月、第10回タンザニア甲子園大会が開催された。第10回記念の特別招待枠として南スーダン代表が参加、招待チームにもかかわらず優勝した。南スーダンの選手たちにとって初めての国際大会であり、初めての優勝だったが南スーダンの選手たちは大喜びせず、淡々と整列し、相手と握手をした。「Good Winnerは相手のことを慮り、勝っても喜びをぐっと抑える。相手と握手して、ベンチに戻ってから喜ぶんだ。ミスター友成がそうやって教えてくれたじゃないか」と選手たちは話した。友成氏の野球による人づくりは着実に成果を出している。
競技 野球
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 野球不毛の地と言われるアフリカにおいて20年以上に亘り普及、指導を行ってきた友成氏。「アフリカと日本の懸け橋となるような人を育てたい」と掲げ、人づくりをめざす友成氏の想いに共感した協力者たちが、現地そして日本からも集まっている。こうした野球を広め人づくりを推進する活動の根底には、尊重、勇気、覚悟のスポーツマンシップが流れている。タンザニア甲子園大会のスローガンとして「規律、尊敬、正義」が掲げられているが、『野球による人づくり』は、アフリカにおける『スポーツマン』を育成する活動であり、スポーツマンシップの普及を具現化する取り組みであるといえよう。
羽生 結弦

写真:青木紘二/アフロスポーツ

テーマ 3連覇を目指した北京五輪でのあくなき挑戦、そしてグッドルーザーに
内容 2022年2月に開催された北京2022オリンピック、男子フィギュアスケートで3大会連続の金メダルをめざした羽生結弦選手。
日本中の期待を背負って迎えたショートプログラムでは、大きな得点源となるはずだった冒頭の4回転サルコーがリンクの「穴」にはまり1回転となってしまい、このミスが響いて8位と大きく出遅れた。巻き返しを狙ったフリースケーティングでは、当時前人未到だった4回転アクセル(4回転半)ジャンプに挑戦。回転不足で転倒したものの、ISU公認大会における4回転アクセルとして初めて認定され、フィギュア界に新たな歴史を刻んだ。
残念ながら結果は4位となりメダルを逃したが、試合後には「本当にすばらしい演技だったと思いますし、やっぱりオリンピックの金メダルは本当にすごいことなんです。彼には4年前の悔しさがあってそれを克服した今があって、本当にすばらしいことだと思っています」と、金メダルを獲得したネイサン・チェン選手(アメリカ)を称えるとともに、「気持ちよくて、すべりやすいリンクだった」と大会運営側にも感謝を述べた。さらには「努力って報われないなと思いました。いろんなことを積んできてもどんなに正しいことをやってきても、報われないときは報われないんだなって」「正直、全部出し切りました。本当に思い残すことなく最初からギア全開でアクセルもしめることができたと思いますし、成功させにいけました。それはもう僕の財産」と語った。
競技 フィギュアスケート
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 94年ぶりの男子フィギュアスケート五輪3連覇が期待された大舞台で、リンクの穴にはまるという不運に見舞われながらも、諦めることなく挑戦を続け、全てを出し切り愉しもうとする覚悟。さらに、一緒にGood Gameを創り出すライバルや、関係者への尊重の気持ちを忘れず、Good Loserとしての姿勢を体現し、負けてもなお羽生結弦という人間が真のスポーツマンであることを示してみせた。2022年7月には、競技としてのフィギュアスケーターから退きプロ転向することを表明したが、長きにわたり、勝者や周囲を尊重する気持ちや報われない努力と向き合う覚悟を教えてくれたスポーツマンとして、その姿勢は高く評価できる。
平野 歩夢

写真:AP/アフロ

テーマ 二刀流のチャレンジャーが3度目の正直でつかんだ栄光
内容 平野歩夢選手は、2014年ソチオリンピック、2018年平昌オリンピックとスノーボード(ハーフパイプ)に出場し、2大会連続で銀メダルを獲得。その後は、夏季オリンピック出場をめざしてスケートボード(男子パーク)へと挑戦の場を移し、2021年、東京2020オリンピックでは日本代表選手団に名を連ねた。
東京大会が1年遅れでの開催となったことから、2022年北京オリンピックに向けては約半年しか時間のない中で、スノーボード選手として北京の地で3大会連続出場を果たした平野選手。十分な準備時間がとれない中で、オリンピック史上初となる大技「フロントサイド・トリプルコーク1440」を成功させるなど高難度トリックによる構成で金メダルを獲得した。しかしながら、2回目のライドでは、「縦3回転・横4回転を入れて、高さを含めてまだ大会で誰も決めたことのない一番難しい難易度の新しいトリックを出したのに、そこがなぜ評価されないのか。理由が分かりませんでした」と平野選手自身が語るように納得のいかないジャッジに対する苛立ちもある中で、「ポジティブにうまく力を発揮できるように切り替えどう集中していくか、次はどう魅せるか」と切り替え、決勝3回目ではベストライドともいえる「96.00点」をたたき出して逆転優勝を果たした。
滑走後、スノーボード界のスーパースターであり長年のライバル、ショーン・ホワイト選手(アメリカ)とも喜びを分かち合った。「ショーンのことをずっと見てきましたし、そしてずっと一緒に戦ってきた相手なので、お互いがお互いの気持ちを想像で感じとれるような部分があります。最年長での北京オリンピックへのチャレンジは当然すごいことだと思いましたが、それ以上のところでお互いに通じる気持ちがあったように感じています」と称え合うリスペクトの姿勢が多くのファンの感動を呼んだ。
競技 スノーボード
スケートボード
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 15歳で銀メダルを獲得したソチオリンピック、4年後ショーン・ホワイト選手の最終滑走で逆転され2大会連続の銀メダルとなった平昌オリンピック。そこでスケートボードに挑み高みをめざした勇気、さらに東京2020大会からわずか半年間という短い準備期間で「金メダル獲得」を目標として掲げ、史上初の大技を成功させて成し遂げた偉業の裏にある強い覚悟は称賛されるべきものだといえよう。ライバルでもあるショーンホワイト選手をはじめ、「相手」の素晴らしいプレーに対しても拍手しながら喜びを分かち合う、リスペクトに溢れたその姿からは、私たちが見習うべき模範的なアスリートとしての心構えが伝わってくる。
村田 諒太

写真:森田直樹/アフロスポーツ

テーマ ゴロフキン選手との歴史的一戦後に見えた「自分に向き合うこと」
内容 2022年4月、WBAスーパー・IBF世界ミドル級王座統一戦をゲンナジー・ゴロフキン選手(カザフスタン)と戦うことになった村田諒太選手。“世紀の一戦”と呼ばれたこの世界王座統一戦は、IBF王者ゴロフキン選手がWBAスーパー王者・村田諒太選手を9回TKOで下し、王座統一を果たした。試合後のリングでは両者ハグを交わし、ゴロフキン選手はリングインの際に着ていたガウンを村田に贈るといった交流の場面も見られた。
試合翌日のインタビューの中で見られた村田選手の言葉には、Good Loserとしての想い、ボクサーとしての彼から学ぶべきスポーツマンシップが数多く散りばめられていた。
「人生、花ばかり咲かせようと思って幹を見ていなかった。試合は花。練習で幹が作られる。花が咲かなくなった、注目されなくなったときに、この幹が、人間としてしっかりしているかどうか。でないと永遠にボクシングをしなければ輝けない人間になってしまう」「怖くないわけないじゃないですか。結局、勇気は恐怖とともにあると思うんです。だから怖くてもいい。怖いけど進むんだ。最終的には、そういう気持ちになれたので。恐怖というものが人生において、絶対的なマイナス要因ではないということを、今すごく感じます」「何を得たか…。『自分に向き合うこと』ですね。相手に勝つことばかり追いかけるのではなく、自分に勝つこと。そして自分に負けなかったこと。自分に負けないこと、自分を律すること。『勝利以上のもの』をもらえた気がします」
競技 ボクシング
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 2012年ロンドンオリンピックでの金メダル獲得から10年。プロ転向した村田諒太さんは、憧れでもあり絶対的な王者であるゴロフキン選手と王座統一戦を戦うこととなった。ボクシングのリングに立ち拳を繰り出し合うこのスポーツは、勇気と覚悟が不可欠である。そのような中で、恐怖に怯むことなく、勇気をもち、前に足を踏み出す姿に、多くの人が感動を覚えたことだろう。試合に敗れた後のゴロフキン選手との抱擁や感謝の気持ちを最後まで忘れず潔く散った姿もまたGood Loserであったといえよう。彼は「自分自身に勝つことの大切さ」をはじめ、想いや行動を「言語化」することに長けた哲学者のようでもある。そんな彼の言葉には、アスリートに限らず誰もに必要なスポーツマンシップを私たちに教えてくれているかのようだ。

日本スポーツマンシップ大賞 ヤングジェネレーション賞 ノミネート

大 賞  

小田 凱人

写真:SportsPressJP/アフロ

テーマ 強い覚悟で最年少記録を次々と塗り替える車いすテニス界の次世代ヒーロー
内容 9歳で骨肉腫を発症し、左足が不自由となった小田凱人選手。大好きだったサッカーを諦めざるを得なかったが、ロンドンパラリンピックで国枝慎吾選手が活躍する姿を見てさまざまなパラスポーツの中から車いすテニスを選んで始めた。それからわずか7年後の2022年、16歳で車いすテニスの年間王者に輝いた。
2022年10月、楽天オープン決勝は、生涯グランドスラムを達成しているレジェンド・国枝慎吾選手との対戦となった。一進一退の攻防で、国枝選手を崖っぷちまで追い詰めたが、あと一歩及ばず敗れた小田選手。「国枝さん、本当に今日の対戦にも感謝したいですし…」と言葉を詰まらせ涙を流す。自らのテニスのきっかけとなった経緯を語り、「こうして同じコートに立って、対戦相手として戦えたことをうれしく思っています。この涙はうれしくて勝手に出てきました。最後の最後で力の差が出てしまいましたが、また来年、さらに強くなって戻ってくることを誓います」と宣言した。
「障がいは、他の人からするとハンディキャップに感じてマイナスにとらえられがちです。でも、”障がい=ハンディキャップ”のまま人生を終わらせたくないという強い想いがあります。この障がいを自分の武器にして、他人と違う自分に自信を持って競技活動に取り組んでいます」「選手としてだけではなく、一人の人間として成長して、同じ病気で苦しんでいる子供たちに夢や勇気を与え、誰かの憧れの選手になれるよう努力していきます」とも語っている。
競技 車いすテニス
評価 尊重◎/勇気◎/覚悟◎
選考理由 楽天オープン決勝「いつかやられる日が来るだろうなと思っていて、今日がその日なのかなと試合中も何度もよぎった」と優勝スピーチで振り返ったのは38歳、その後引退し国民栄誉賞を受賞した国枝慎吾選手だった。「タフな決勝戦、凱人のスピーチも16歳とは思えないぐらい立派過ぎて、試合もスピーチも追い込まれている」と国枝選手も称える小田凱人選手。
14歳の時には、18歳以下の世界一決定戦「世界Jr.マスターズ」に出場し、シングルスとダブルスで優勝。史上最年少14歳11カ月18日でジュニア世界ランキング1位となった。2022年4月には、車いすテニス国内最年少の15歳11カ月20日でプロ転向を宣言。2022年10月~11月にオランダで開催されたシングルスの年間成績上位8人で争うツアー最終戦を史上最年少で制覇し、史上最年少での年間王者となった。
トップ選手となった今も、病気と向き合う日々は続く。3ヶ月に1度は検診を受けながら、パリパラリンピックでの金メダルをめざす若きホープは、尊重、勇気、覚悟、3つの気持ちを備えた模範的なスポーツマンとしての姿を見せてくれている。

特別賞  

湘南アルタイルズ

テーマ 「部活」の枠を超えた高校ラグビーの前例なき挑戦
内容 2021年夏、平塚工科高校ラグビー部は、ラグビー部を母体に他校の生徒も加入できるクラブへと進化した「湘南アルタイルズ」として始動。この「クラブ化」の理由は、部員不足ではなく、"単一の高校の生徒だけで活動するよりも、異なる環境、異なる背景を持つ様々な個性が集い、共通の理想を実現すべくワンチームを結成して活動した方が、ラグビーの魅力をより深く濃く味わえる"というものだった。
「ラグビーを愛する、仲間をリスペクトできる者」という参加資格のもと、高校の枠組みではない外部の選手が仲間入りすることで、多様性を許容しながら、自分たちのレベルアップを実現を目指している。
競技 ラグビー
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 部活のクラブ化には、反対の声もあったそうだが、選手たちによりラグビーの魅力を感じてもらい、より人間として成長してほしいというクラブとしての勇気と覚悟を感じる。さまざまな変化を強いられることになったプレーヤーたちも、自らの成長の機会と捉えることで受け入れ、部活生、クラブ生の垣根を越えてワンチームを目指すGood Fellowであり、スポーツマンであるといえよう。
岩渕 麗楽

写真:ロイター/アフロ

テーマ ライバルたちからも称賛された大一番での超大技への挑戦!
内容 2022年2月、20歳で出場した北京2022オリンピック。スノーボード女子ビッグエアの決勝、2回目を終えて4位だった岩渕麗楽選手は、逆転をかけた3本目に女子では史上初となる最高難度の超大技「トリプルコーク(縦3回転)」に挑戦する。惜しくも着地に失敗して転倒してしまうが、勇気あるトリックをみせた岩渕選手に対し、先に競技を終えたファイナリストたちが次々と駆け寄った。その数、アメリカ、カナダをはじめとする総勢7人。岩渕選手と抱き合って称賛するシーンは多くの感動を呼んだ。転倒の影響もあり4位となり惜しくもメダルに届かなかったが、試合後には「一緒に競ってきた選手たちが、一緒に喜んでもらって良かったです」と語った。
競技 スノーボード
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 オリンピックという大舞台で、失敗を恐れず、また最後まで諦めず、自分のいま持てる力をすべて発揮しようとした岩渕選手の勇気・覚悟は素晴らしかった。そしてその大きな挑戦がライバルたちの心に響き、共感、称賛を呼んだ。岩渕選手から、またその周囲のアスリートたちからも、それぞれの尊重の精神が伝わってきたことが感動的なシーンを生み出したのである。
佐藤 悠斗
仙台育英学園高等学校 硬式野球部 主将(当時)

提供動画より 動画提供:三浦千佳

テーマ 「甲子園優勝」の大舞台で忘れなかったリスペクト精神
内容 2022年8月22日、第104回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)決勝「仙台育英学園高等学校 対 下関国際高等学校」が行われ、8-1で仙台育英が勝利し、初優勝を飾った。
勝利校・仙台育英高校による校歌斉唱後、応援席に向かって全選手たちが走り出していく中、キャプテンである佐藤悠斗選手のみその場に立ち止まる。審判団や3塁側ベンチ(下関国際)に向かって深くお辞儀をした後、仲間の後を追いかけて応援席へと走って向かった。
コロナ禍でほとんど満足のいく練習ができなかった中での優勝は感慨深いものであるが、一歩立ち止まり、ともにグッドゲームを創り上げた相手に対するリスペクトを最後まで忘れない、スポーツマンらしさを見せた大切な場面であった。
競技 野球
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◯
選考理由 高校野球における最上級の結果が「甲子園優勝」である。一度負けたら終わりというトーナメント形式を戦い抜く中、優勝という結果を得たその後、最後の最後まで相手や審判等に対する敬意の気持ちを忘れず、それを行動として表現する姿は印象的であった。
津山 颯佑
和光市学童野球選抜チーム

テーマ 取り組み姿勢からあふれる「スポーツマンシップ」
内容 津山颯佑選手は、2022年、埼玉県和光市学童野球選抜チームに所属する小学6年生だった。選抜チームに入り、スポーツマンシップ勉強会に参加する。「勉強会後、変化が起こってきた」とスポーツマンシップコーチであり、同チームの監督を努めていた長谷川寿氏は語る。
試合中、打席や塁上で審判へ挨拶するなど、徐々に「尊重」の気持ちを行動として表現し始めた。これまで打たれてしまうと自信が下がる様子があったが、「勇気」を持って投げることを覚え、公式戦3試合に先発投手として登板し、チームを埼玉県ベスト8に導いた。苦手な練習も積極的に取り組んだり、失敗をしてもすぐに気持ちを切り替えて声を出す姿に「覚悟」が芽生えてきた。
スポーツ少年団の卒団式では、選手代表挨拶に自ら手を挙げ、他競技選手がいる中でも堂々とスポーツマンシップについて説明してみせた。
競技 野球
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 年齢を問わず誰でも「スポーツマン」になれるということを体現しているモデルケースだといえる。「スポーツマンシップを勉強した」「スポーツマンシップを知っている」に留めず、実際の行動として表現していることが素晴らしいといえよう。「スポーツマンシップを紹介する」代表挨拶に名乗り出たことで、スポーツマンシップを自ら言語化し、より学びを深めている。野球選手として、また、スポーツマンとして、これからの活躍に期待したい。
天理高等学校&生駒高等学校 野球部

写真:日刊スポーツ

テーマ コロナ禍で生まれたライバルとの絆、引退試合で実現したGood Game
内容 第104回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)奈良県地区予選決勝は「天理高校 対 生駒高校」のカードとなった。ところが、生駒高校野球部内で新型コロナウイルス感染症が広まり、ベンチ入りメンバー20名のうち、12名の入れ替えを余儀なくされる事態に見舞われる。生駒高校は中心選手不在の影響もあり、試合は21-0での天理高校の大勝となった。勝利した天理高校の選手たちも複雑な想いから試合後も喜ぶことはせず、生駒高校の選手たちの気持ちを慮った。
この出来事から両校の絆は深まり、生駒高校の生徒たちが天理高校の試合をアルプススタンドで応援するなど交流を重ねていく。そして、甲子園大会が終わった9月、天理高校からの提案により、「決勝」の再戦が実現する。
3年生の引退試合として行われたこのゲームは、両者ベストメンバーによる1点を争う白熱した試合展開となり、よきライバルとともに野球ができる喜びに溢れていた。試合は、3-2と逆転勝利を収めた天理高校に軍配が上がった。今回は試合終了と同時に、マウンドに集まり勝利を喜んだ天理ナイン。そこに生駒高校ナインも加わり、全員で1つの歓喜の輪を創り上げた。
競技 野球
評価 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎
選考理由 Good Gameの意義を問う事例だといえよう。ベストメンバーとはほど遠い状況ながら不戦敗とはせず、試合を成立させる選択をした生駒高校。そして決勝戦では、大差で優勝を飾る場面で、選手同士が「マウンド上に集まって喜ばない」という判断をした天理高校。「互いに勝利をめざして真剣に全力を尽くす」というGood Gameの前提条件が整わないことを理解した上で、互いにリスペクトの精神を発揮した姿勢が見てとれる。またそれを機に、生駒高校も悔しさをこらえ、勝った天理高校を応援しながら、互いに友情を育んでいった様子には清々しさを覚える。再戦の実現へとつながったこと、お互いをリスペクトしながら全力で勝負に挑んだこと、最後は「勝敗」以上の喜びをともに分かちあうことができたこと。両チームのGood Gameを創ろうとする心構え、まさにスポーツマンシップにあふれたゲームだったといえよう。
笠松町立松枝小学校

テーマ スポーツマンシップを大切にし児童がつくりあげる運動会
内容 岐阜県羽島郡にある笠松町立松枝小学校では児童の自主性を重んじて、「自分ごと」として考えること、そして、互いに高め合える仲間づくりを大切にしているという。同校では運動会においても目的意識を明確化し、お互いに高め合う会とするために、4つの約束「松枝小 スポーツマンシップ 4か条」を制定し生徒に伝えていた。
①最後まで全力をつくす
②相手に感謝
③ルールを守る
④正々堂々とプレーする
この4つを全校生徒で大切にして、みんなが愉しく高め合える運動会を創り上げることをめざした。
なお、運動会は6年生だけ2週間先送りとなって開催されたが、その際に6年生は、「自分たちの力で最大限愉しめる運動会を創り上げよう」と延期を前向きに捉え、まさに「ピンチをチャンスに変える」発想で、開会式にダンスを取り入れるなどオリジナリティあふれる運動会を成功させた。
競技 運動会
評価 尊重◎/勇気〇 /覚悟◎
選考理由 「松枝小 スポーツマンシップ 4か条」には日本スポーツマンシップ協会が説くスポーツマンに求められる3つの気持ち「尊重」「勇気」「覚悟」の中で、尊重と覚悟の部分を噛み砕いて表現されている。そしてこの運動会のエピソードからは「やさしく かしこく たくましく」と自主性をもって、自分たちで考えやり抜くことをめざす学校の教育方針に対して、児童たちがそれを理解して受け入れ、きちんと自分たちで発揮できている様子が窺える。

発起人・川淵三郎氏よりメッセージ

スポーツマンシップを身につけた真のスポーツマンこそが
現代の日本にもっとも必要な存在である。

日本スポーツマンシップ大賞/Japan Sportsmanship Awards
発起人代表
川淵三郎(一般社団法人日本トップリーグ連携機構 代表理事会長)

各賞概要

日本スポーツ界において、尊重・勇気・覚悟に代表されるスポーツマンシップを発揮した中で、最も印象的な個人・団体を「グランp」として、学生など若い世代を対象とした最も印象的な個人・団体を「日本スポーツマンシップ大賞 ヤングジェネレーション賞」として表彰します。

審査委員会

◆審査委員長
中村聡宏(一般社団法人日本スポーツマンシップ協会 代表理事会長/千葉商科大学サービス創造学部 准教授)

◆審査委員
江口桃子(一般社団法人日本スポーツマンシップ協会 理事、アナウンサー)
太田雄貴(国際オリンピック委員会 委員/国際フェンシング連盟 理事)
大山加奈(元バレーボール日本代表)
島田慎二(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ「B.LEAGUE」 チェアマン/代表理事CEO)
高橋勇市(アテネパラリンピック 視覚障害マラソン金メダリスト)
益子直美(元バレーボール日本代表)
山中正竹(一般財団法人全日本野球協会 会長)
湧永寛仁(公益財団法人日本ハンドボール協会 会長、湧永製薬株式会社 代表取締役社長)

※肩書きは審査委員会開催当時

<日本スポーツマンシップ大賞2023概要>

名称

日本スポーツマンシップ大賞 2023

目的

当該年度において優れたスポーツマンシップを発揮した個人・団体を表彰することで
スポーツマンシップの正しい普及・啓発をおこなう

開催日程

2023年6月24日(土) 15:00~17:45

開催場所

HRソリューションズ株式会社 セミナールーム

内容

・グランプリ、ヤングジェネレーション賞の発表

主催

一般社団法人日本スポーツマンシップ協会

 

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