日本スポーツマンシップ大賞2022発表!
~優れたスポーツマンシップを発揮した個人・団体を表彰~
「日本スポーツマンシップ大賞/Japan Sportsmanship Awards」は、尊重・勇気・覚悟を備えたよきスポーツマンとしての振る舞いや、よきスポーツマンシップを示した個人・団体などを表彰する取り組みです。単なる勝敗を表彰するだけではなく、こうした事例にスポットライトを当てることで、スポーツマンシップの普及・啓発を進める上で、スポーツに取り組むべき姿勢やスポーツを愛するみなさんがめざすべき、スポーツマンという存在の意義・価値がよりわかりやすく伝わることを期待します。
受賞
グランプリ
大谷 翔平ヤングジェネレーション賞
入江 聖奈特別賞
家本 政明ノミネート
日本スポーツマンシップ大賞 ノミネート
大 賞
大谷 翔平
テーマ | "SHOWTIME" を支える"SPORTSMANSHIP" |
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内容 | 二刀流として球史に残る活躍を見せた2021シーズン。1918年のベーブ・ルース以来、103年ぶりとなる2ケタ勝利&2ケタ本塁打にはあと1勝届かなかったものの、これまでの常識を覆す数々の金字塔を打ち立てた。オールスターゲームでは、史上初めて“投打の二刀流”で選出され、アメリカンリーグのシーズンMVPにも選出された。 大谷翔平選手が称賛されるのはそのプレーばかりではない。試合内外において、グラウンドに落ちているゴミを拾う姿、ファンサービスに勤しむ姿勢、チームメイトから愛される性格……などエピソードは枚挙に暇がないように、成績以上にその人柄が高く称賛されている。 【打撃成績】[試合]155[打率].257[本塁打]46[打点]100 【投手成績】[先発]23[勝利]9[敗戦]2[防御率]3.18[奪三振]156 <2021年受賞・選出> MLB「アメリカンリーグ シーズンMVP」、「シルバースラッガー賞」受賞、プレイヤーズ・チョイス・アワーズ「年間最優秀選手」 タイム誌による「世界で最も影響力のある100人」選出 、AP通信「年間最優秀男性アスリート賞」受賞 |
競技 | 野球 |
評価 | 尊重◎/勇気◎/覚悟◎ |
選考理由 | 高校卒業後もMLB入りを目指したことが知られている大谷選手。NPBでの活躍、そしてMLB移籍後も、投手・打者の二刀流に挑戦し、歴史的な結果を残し続けていることを見ても、練習や心身のコンディショニングをはじめ人並み外れた努力を重ねていることは想像に難くない。MLBで活躍することだけでも素晴らしいことだが、大谷選手は「世界で一番の選手になる」という目標を掲げているように、有言実行で調整を続けてきた。 この目標に対し、「足りなかったなというところは、たくさんある。ただ、その目標に向けて確実にレベルは上がったかなと思う。そこは自信を持って言える」と語っているように、周りの選手との比較ではなく、自分自身との闘いに挑み、レベルアップしながらより高みを目指すスポーツマンとしての矜持が感じられる。 つねに謙虚に、周囲に配慮し、笑顔を絶やさず、審判・チームメイト・対戦相手・メディア・ファンなど周囲や、アメリカという文化・環境・歴史に対する尊重の精神。前例主義がイノベーションを阻む世にあって、周囲の声に負けず常識を打ち破り二刀流への挑戦を自ら貫く勇気。夢を言葉にし有言実行しながら自分の人生を愉しみぬく覚悟。大谷翔平選手が示す「スポーツマンマンシップ」が、比類なき成績に加えて、プレーヤーとしての価値をさらに高めている。 |
特別賞
家本 政明
テーマ | 「嫌われた審判」から「愛された審判」へ |
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内容 | 家本政明氏は、自身も選手としてプレーしプロを目指していたが、大学在学中に病気を患い選手を断念し、その後働きながら審判を目指すことになった。サッカークラブの勤務を経て、史上最年少の32歳でプロの審判員として日本サッカー協会と契約。審判員になった当初は、「選手と話をしてはいけない」、「笑ってはいけない」という審判員全体の指針があり、自身のなかでも厳格に試合をコントロールしようとするあまりにカードを乱発したケースも目立った。主審を担当した2008年のゼロックススーパーカップでは、警告11枚・退場者3人をだす大荒れの試合となり、当面の割り当て停止(審判としての出場停止)を命じられてしまったことも。 その後、サッカーの審判員である意義を自ら考え直し、サッカーが好きで、サッカーを楽しむ、という原点に戻る。選手と「一緒にいいゲームをつくる」ことを目指し、選手とコミュニケーションを図り、スムーズな試合運びで安定したレフェリングへと変わっていった。協会・選手からの信頼を取り戻し、Jリーグ担当審判員(主審)最多出場試合数を更新するまでになる。自身のプロフェッショナルレフェリーとしてのラストマッチとなった2021年12月4日、川崎フロンターレ対横浜F・マリノスでは、試合後に両チームの選手が花道をつくり、サポーターからの感謝の横断幕がスタジアムに掲げられた。 |
競技 | サッカー/レフェリー |
評価 | 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | 審判にとって自らのレフェリングの指針を変更するのは、過去の自分を否定することであり「勇気」がいる行為である。しかし、自らの失敗を受け止め、サッカーに対して審判員がどうあるべきか考え抜く、ある意味での「グッドルーザー」としての姿を見せてくれた。また審判としてのあるべき姿を考える際に、「ゲームを愉しむ」というスポーツ本来の価値をもとに考えて直すことにした「覚悟」が感じられる家本氏の姿勢はスポーツマンであるといえよう。審判員と選手がゲームを構成する大切な要素であり、互いに尊重し合うべき存在であることは、家本氏がチャレンジしてきた道のりと、選手たちが示した最後の姿が示している。 |
井上 康生
テーマ | 伝統や常識を覆して築き上げた柔道界の新たな指導者像 |
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内容 | 金メダル「0」に終わった2012年ロンドンオリンピック後、暴力指導など相次ぐ不祥事で柔道界の威信が損なわれていた時期に男子日本代表監督に就任した井上康生氏。2016年リオデジャネイロオリンピックでは52年ぶりに全階級でメダルを獲得。2021年東京2020オリンピックでも5階級で金メダルを獲得するなど、日本柔道を復活へと導いた。 伝統や常識にとらわれず多くの改革を断行。長時間、乱取り(選手同士が自由に技を掛け合う)が中心だった練習は、明確な目的をもったメニューで短時間、科学的に改善。選手にも、伝統的な「投げて」勝つだけの意識から脱却させ、「戦略的」に勝つ意識を植え付けていった。監督と選手の関係性においても、自ら選手の視線に合わせた対話を重視し、徹底的に選手と向き合った。 自身の指導理念として「最強かつ最高の選手育成と組織作り」を掲げ、強さだけでなく、人から認められ尊敬される選手やチームを作ることを目指し、柔道界の新たな指導者像を築き上げた。男子日本代表監督としては、全日本柔道連盟が内規で定めている最長任期となる2期9年を務めた。 |
競技 | 野球 |
評価 | 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | 井上氏が掲げる指導者として考え方の指針は『熱意』・『創意』・『誠意』である。
『熱意』:「これをやるんだ」「俺はできるんだ」という熱い思いを持つこと、 これは日本スポーツマンシップ協会が「スポーツマンが大事にすべき3つのキモチ」として掲げる『尊重』・『勇気』・『覚悟』にも符合する。井上氏自身が柔道界の復権のために勇気・覚悟をもって改革を断行するとともに、選手・サポートスタッフ・メディアなど関係者すべてを尊重しながら構築してきたコミュニケーションが、指導者としてのスポーツマンシップを示している。 |
国枝 慎吾
テーマ | 2大会ぶりのパラリンピック金メダルを獲得した不撓不屈の精神 |
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内容 | 車いすテニスのトッププレーヤーとして君臨し、2008年北京、2012年ロンドンと2大会連続でパラリンピック シングルス金メダルを獲得。しかし3連覇がかかった2016年リオデジャネイロ大会では、大会直前に右ひじの手術を受けた影響でベスト8敗退。本人が「記憶が封印されて思い出せないくらい、つらかった」と語るほどの挫折を味わった。 失意の中、ひじへの負担が少ないフォームへの変更に取り組む。身体の使い方や打感も変わる大変な作業の中、新しいフォームを自分のものにし、2018年には再び世界ランキング1位に復帰して、東京パラリンピックへの期待が高まった。 2020年、万全の状態で迎えるはずだった東京パラリンピックは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で1年延期。2021年東京2020パラリンピックを前に4大大会では優勝できず、コンディショニングに苦しみ大きな不安を抱えるなか、最後まで諦めず2大会ぶりとなるシングルス金メダルを獲得した。 |
競技 | 車いすテニス |
評価 | 尊重〇/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | パラリンピック金メダルを目指す中で、プレーヤーとして何度苦境に立たされても、這い上がってくる不撓不屈の精神の持ち主。敗退したリオ大会のあとはにラケットを置くことも考えたと言うが、あらきらめることなく、東京2020大会で見事金メダルを獲得した。 試合後に国枝慎吾選手が語った「まだ夢の中にいるようだが、この日のためにすべてを費やしてきたので報われてよかった」という言葉には、すべてを懸けてきたアスリートの「勇気」と「覚悟」が感じられた。「こうして東京パラリンピックで金メダルをとれるというのは、リオが終わった直後は信じられなかった。この舞台に立たせてくれて、本当に感謝の気持ちでいっぱいです」と支えてくれた周囲への「尊重」を示す感謝の言葉は、国枝選手が良きスポーツマンであることを示していた。 |
丹羽 孝希
テーマ | 大舞台の大一番で「負けを認める」フェアプレー |
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内容 | 東京2020オリンピックの卓球男子団体準決勝「日本×ドイツ」第5試合、丹羽選手はドイツのエース・オフチャロフ選手と対戦した。丹羽選手は団体戦の前に行われたシングルスでもオフチャロフ選手と対戦して敗れており、雪辱を期す試合となった。オフチャロフ選手が第1、第2セットを連取し、迎えた第3セット。オフチャロフ選手がマッチポイントを迎える中、ラリー中で放った丹羽選手の強打にオフチャロフ選手のカウンターボールは浮き、アウトの判定となった。丹羽選手が点数を取ったように見えたが、丹羽選手はすぐに台を指差して、オフチャロフ選手のボールが、ぎりぎりで卓球台の角にあたって入っていたことを認めたのである。 この結果、オフチャロフ選手のポイントとなり準決勝はドイツが勝利し、日本は3位決定戦に回ることになった。その後の3位決定戦では、丹羽選手はダブルスで勝利するなど日本の銅メダル獲得に貢献した。 |
競技 | 卓球 |
評価 | 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | オリンピックという特別な舞台でたどり着いた準決勝という大舞台。しかも、勝敗が決する最終第5試合、そして迎えたマッチポイント。まさに土壇場である。自らの勝ちたい気持ち、周囲からの期待、究極の場面を迎えたプレッシャーなど、相手の勝利を認めたくない状況であり、相当な強い精神力が求められるシチュエーションである。そのような中で、素直に相手のポイントを認め、負けを受け入れた丹羽選手。公正に競技する姿勢は、対戦相手や競技そのものに対する「尊重」を感じるとともに、自ら敗北をを認める「勇気」と、オリンピックという舞台や卓球に向き合う「覚悟」が感じられた。 |
バスケットボール 女子日本代表
テーマ | 努力の末に大会を愉しみ抜くGood Fellowたち |
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内容 | 2021年東京2020オリンピック前、世界ランク10位だった女子日本代表が銀メダルを獲得。1976年モントリオール大会の5位を上回る史上最高成績を収め、バスケットでは男女を通じて初めて表彰台に立った。 平均身長1m76cmは、出場12チーム中2番目の低さ。それをカバーすべく、トム・ホーバス監督のもと厳しい練習に臨み、100以上あるといわれるフォーメーションを戦況によって使い分けながら、3ポイントシュートを最大の武器として強豪相手の勝負に挑んだ。 1次リーグを2位で突破し決勝トーナメントに進出。準々決勝のベルギー戦では終了間際の大逆転劇で勝利すると、準決勝も格上のフランスに勝利してメダル獲得を決めた。決勝はオリンピック6連覇中の絶対女王・アメリカに挑んだが、残念ながら勝利することはかなわなかった。しかしながら、最後まで諦めずプレーする姿勢で史上初となる銀メダルを獲得、日本バスケット界に金字塔を打ち立てた。 |
競技 | バスケットボール |
評価 | 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | フィジカル面での不利をカバーするため、厳しい練習を通して、日本代表選手の特徴を最大限に活かした戦術を浸透させたホーバス監督が「スーパースターはいないが、スーパーチーム」と自ら評するほどのチームワークを発揮した。強豪国に対して、「勇気」と「覚悟」をもって挑戦していく選手たちのハツラツとした姿は、日本中に感動を与えた。 また、メダルセレモニーで見せた姿は、彼女たちのGood Fellowぶりを表していた。試合後のメダルセレモニーのあとに、金メダルのアメリカチーム、銅メダルのフランスチームを含めた36選手全員が入り混じって1枚の写真に映った姿からは、試合を終えたオリンピアンたちが尊重し合い友情を育む様子がみてとれた。これぞオリンピズムともいえるスポーツマンシップを体現する彼女たちメダリスト全員の姿に、海外メディアをはじめ「これぞオリンピック」と称賛の声が上がった。 |
日本スポーツマンシップ大賞 ヤングジェネレーション賞 ノミネート
ヤングジェネレーション賞
入江 聖奈
テーマ | 笑顔あふれる「スポーツマン」が示した新たな女王像 |
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内容 | 県立米子西高校時代には、全日本女子選手権(ジュニア)を2連覇、国際大会でも2018年世界ユース選手権で銅メダルを獲得するなど、ユース時代から注目された存在だった入江聖奈選手。2019年に日本体育大学へ進学、同年の世界選手権日本代表に選出された。東京2020オリンピックでは女子フェザー級に出場、決勝に勝ち進むと、フィリピンのネスティー・ペテシオ選手を5-0の判定で破り、日本ボクシング界女子初となる金メダル獲得の快挙を成し遂げた。また、リング入場時には笑顔を絶やさず、また終了後もライバルへの感謝の言葉とともに礼儀を大切にする「尊重」の姿勢を怠らない。金メダル獲得直後には、ボクシング引退宣言をして周囲を驚かせたが、そこには自身を俯瞰して考えた末の将来ビジョンがあった。持ち前の愛嬌と明るいキャラクター、そして飾り気のない言葉には、格闘技の世界にありがちな「孤高な」チャンピオン像ではなく、新たな「スポーツマン」像を示したといえる。 |
競技 | ボクシング |
評価 | 尊重◎/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | カエル愛好家として情熱的に語るその言動などがメディアに注目されがちだが、本当に注目すべきは、入江選手のスポーツマンらしい試合中の立ち居振る舞いにある。お辞儀やハグなど試合前後に示すライバルや審判への「尊重」と感謝の言葉。1対1でリングの上で拳を交えるボクシングという競技に向き合う「勇気」と「覚悟」。そして、その競技特性から身につけた、自分自身を常に俯瞰する自己客観力。そしてそれを言葉として発信できる言語力と人間力に多くの人々が魅了された。 「大学卒業後はボクシングを辞め大学院進学を目指す」と発言し、「金メダリストでチヤホヤされるのは今だけ」とも語っている。プレーヤーとして現役であることにこだわりすぎることのない将来ビジョンも含めて、「親しみあるGood Winner」とでもいうべき、新たなスポーツマン像を示すトップランナーといえるかもしれない。 |
大阪桐蔭高等学校 硬式野球部
テーマ | 「泥だらけの大一番」で見せた尊重あふれる行動 |
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内容 | 2021年8月に開催された「第103回全国高等学校野球選手権大会」。1回戦屈指の好カード「大阪桐蔭高校(大阪)×東海大菅生高校(西東京)」は土砂降りの悪天候の中で行われた。結果として大阪桐蔭が7-4、8回表途中降雨コールド勝ちとなった。大雨で田んぼ状態と化したグラウンドは、ぬかるみで打球が止まり内野安打となったり、打者のバットがすっぽ抜けたりするなど、危険なシーンも生じる難しいコンディションの中での戦いとなった。試合に集中することも難しい状況にも関わらず、大阪桐蔭のベンチメンバーの心遣いが際立っていた。東海大菅生の攻撃時にバットが大阪桐蔭の1塁側ベンチ前に転がってしまった際も、大阪桐蔭のベンチメンバーがグリップを拭いて渡したり、泥がつき手元を気にする審判を気遣ってタオルを差し出したりするなどの気遣いを見せた。 |
競技 | 野球 |
評価 | 尊重◎/勇気〇 /覚悟〇 |
選考理由 | 相手選手や審判への「尊重」を示す行動はスポーツマンとして重要な要素である。特殊な天候状況の中で大阪桐蔭高校硬式野球部が見せた姿勢、いかなる状況下でも対戦相手や審判を「尊重」することを忘れず「Good Game」を創ろうとする姿は、スポーツマンシップを強く感じさせる好例であるといえよう。 大阪桐蔭高校が掲げる部訓は「一球同心」であるという。野球は決して一人の力だけで勝つことのできるスポーツでないことを理解し、チーム全員の心をひとつにして一球一球に想いを注ぎ込むことの大切さを「一球同心」という言葉で表現している。そこには、チームとして野球に向き合う「覚悟」が込められている。こうした日々の積み重ねが、スポーツマンを育む土壌となっているのかもしれない。 |
岡本 碧優
テーマ | ライバルたちの心を動かした「チャレンジ精神」 |
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内容 | 愛知県出身の15歳、中学3年生の岡本碧優選手は、世界ランキング1位(当時)として迎えたこのオリンピックで、金メダルの最有力候補として注目を集めていた。兄の影響で8歳からスケートボードを始め、スピードをつけてコースの縁からジャンプする「エア」は世界屈指の高さを誇る。小学6年生の時に「世界で活躍できる選手になりたい」と強い「覚悟」を持って、愛知県から岐阜県へ移住し、練習を重ね、技に磨きをかけてきた。 結果として1年延期となって2021年に開催された東京2020オリンピックでは、王者でありながらもチャレンジャーとして、最後までメダルを諦めず果敢に挑戦し続けた。暫定4位だった岡本選手が、メダルを狙って果敢に挑んだ最終演技。華麗にボードを乗りこなしていたものの最後の着地で転倒し、メダルにはあと一歩届かなかった。悔し涙を見せていた岡本選手を笑顔にしたのはライバルたちだった。演技後、他の選手たちが涙に暮れる岡本選手の元へと駆け寄り、担ぎあげて健闘をたたえたのである。最後まで果敢に高難度に挑戦する姿は、ライバルたちだけでなく多くの人たちの心を動かした。 |
競技 | スケートボード |
評価 | 尊重〇/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | 小学生時代から世界を見据えて単身転校し、スケートボードの腕を磨こうとする行動には、スポーツマンとしての強い「勇気」と「覚悟」を感じさせる。そして、東京2020オリンピックの最終演技は、最後まで勝利することを諦めない「覚悟」と、金メダルを目指してリスクを冒しレベルの高い技で挑戦する「勇気」が感じられるものだった。同時に、その姿は、ライバルたちの「尊重」の気持ちを引き出した。たたえ合う選手たちの姿に、スポーツマンシップを感じた人たちも多いだろう。東京2020オリンピック最大のハイライトは、10代の若き女子アスリートたちが見せた「スポーツマンシップ」あふれる場面だった。 |
須﨑 優衣
テーマ | どん底からの逆襲を実現した金メダルまでの道のり |
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内容 | 圧倒的な強さでオリンピックチャンピオンとなった須﨑優衣選手。2019年夏、メダルをとればオリンピック代表に決まるという世界選手権出場をかけたプレーオフでライバル・入江ゆき選手に敗れ、一度はオリンピック代表も絶望的となった時期もあった。JOCエリートアカデミー時代から指導を受ける吉村祥子コーチからは「チャンスは0.01%ぐらいかもしれないけど、チャンスが巡ってきた時にしっかり戦える準備をしよう」と鼓舞された。実際に復活のチャンスが訪れ、その後の代表争いをものにして、オリンピック出場をつかんだ。座右の銘「人事を尽くして天命を待つ」が実った。 新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言が発令された2020年4月。須﨑選手の練習拠点も約2カ月閉鎖されたように、その後の道のりも決して平坦ではなかった。 そして、迎えた東京2020オリンピック。決勝はスン・ヤナン選手(中国)と対戦、10-0のテクニカルフォール、わずか1分36秒という電光石火での圧勝で金メダルを獲得した。オリンピックの大舞台で、1回戦から1ポイントも失わず、合計得点41−0という衝撃的な勝利を収めた。 どん底から這い上がり、「絶対に金メダル」と誓った通りの結果を達成した須崎選手は、「夢をかなえた瞬間でしたので、本当に最高の気持ちでした。そして、8年間の思いが詰まった金メダルは、すごく重たい」と語った。そして、「本当に今の自分があるのは、自分に関わってくれた全ての人のおかげ。感謝の気持ちで一杯です」と話し、笑顔を見せた。 |
競技 | レスリング |
評価 | 尊重〇/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | どんな時でも、メディアと正対し、真摯な姿で自らの言葉を発信する須﨑選手は「尊重」の精神を強く感じるアスリートである。 そして、「自分の長所は、勇気を持って攻めて勝つレスリング。その武器については、常に自信を持っていたい」と語るように、「勇気」あふれる攻撃スタイルをストロングポイントにしている。 しかし、東京2020大会までの道のりは、茨の道だった。2018年には大ケガを経験。2019年にはライバルに敗れ「夢がなくなり、人生のどん底に落ちた気持ちだった」というほどの屈辱も味わった。「東京2020オリンピックで金メダルを獲得するまでにたくさんの試練がありましたが、一つひとつ乗り越えるたびに私は強くなってこられたと思います。壁にぶつかった時に諦めず、くじけず、めげずに立ち向かって乗り越えたからこそ今がある」と須﨑選手が語るように、彼女の諦めない「覚悟」がこの結果へと結びついた。「インプットしたら、それをアウトプットすることが必要だということを学んでいます。自分が教わったことをしっかり後輩に伝えられるように、言語化して伝えることができるように意識はしています」と、自分だけではなく後進への想いを口にする姿からもスポーツマンとしての自覚が感じられる。 |
智辯学園和歌山高等学校 硬式野球部
テーマ | 甲子園優勝の歓喜とライバルへのリスペクト |
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内容 | 2021年8月に開催された「第103回全国高等学校野球選手権大会」。決勝戦は智辯和歌山(和歌山)と智辯学園(奈良)との兄弟校による対戦となった。結果は9-2で智辯和歌山が通算3回目の甲子園制覇を成し遂げた。 和歌山県大会、そして甲子園大会それぞれで優勝を経験した智辯和歌山だが、2つの優勝で共通することがあった。それはゲームセットの瞬間、通常であれば勝利の喜びを爆発させて、マウンドにナインが集まり歓喜の輪をつくるチームがほとんどの中、いずれの瞬間にもグラウンドに「輪」はなかった。思わず拳を突き上げたものの、マウンドに駆け寄る選手はなく、派手に喜ぶことも、集まることもなく、1人1人駆け足で整列に向かった。 この発端は、県予選決勝の試合前に中谷仁監督が「礼に始まり礼に終わるのが高校野球だよな。決勝まで勝ち上がってきた素晴らしいライバルに、敬意を表するにはどうすればいいか。あいさつのために整列しているのを待たせて、大喜びするのはどうなのだろうか。また、コロナの状況下で大会を開催してくれたことに感謝し、最後まで感染対策を徹底して密状態をつくらないことも大切ではないか」と選手たちにかけた言葉にあった。チームとしてライバルを尊重し、応援してくれた仲間や家族らに感謝の気持ちを大切にする。2021年夏、智辯和歌山ナインの姿はまさにGood Winnerの振る舞いだった。 |
競技 | 野球 |
評価 | 尊重◎/勇気◎〇 /覚悟◎ |
選考理由 | ライバルを破って2年ぶりの甲子園行きの切符を手に入れた瞬間。また、高校野球でも最大の勝利ともいえる「全国制覇」の瞬間。数々の試練を乗り越えて得た瞬間は格別の歓喜が生じる場面であり、その喜びの感情を爆発させることは決して「悪」ではないことは大前提である。 一方で、智辯和歌山高校ナインが見せた態度は、自分たちの喜びを表現する以上に、グッドゲームを創り出すことにともにチャレンジしたライバルへの敬意、そして応援してくれた仲間たちへの感謝の気持ちを最大限重んじるものだった。監督の言葉を受けて、自分たちで考えて態度・行動として示した振る舞いは、まさにGood Winnerであるといえよう。 |
橋本 大輝
テーマ | ライバルのベストと、それを上回る勝利を願う新エースの覚悟 |
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内容 | 兄の影響を受け、6歳で体操を始めた橋本大輝選手。2018年全日本ジュニア選手権団体で優勝。19年世界選手権団体総合で銅メダルを獲得。21年には、全日本個人総合選手権で初優勝を果たすなど実績を積み重ねてきた。迎えた同年の東京2020オリンピックでは、個人総合、種目別鉄棒で金メダル、団体総合で銀メダルを獲得。エースとして日本代表を長年けん引してきた内村航平選手の後継者としてふさわしい、19歳の若き次世代エースの誕生を予感させた。 東京2020オリンピック団体戦では、ライバルであるROC(ロシアオリンピック委員会)と中国とが熾烈なメダル争いを繰り広げる中で、自分自身を高めるよきライバルとして両国選手の演技をたたえ、ときにグータッチやハグをするなど、リスペクトあふれる姿を示した。 また、日頃から「相手の失敗ではなくベストを出すこと」を願い、その上で勝つことを目指す橋本選手の姿勢からは、スポーツマンとして、より高みを目指す「覚悟」が感じられる。 |
競技 | 体操 |
評価 | 尊重◎/勇気〇 /覚悟◎ |
選考理由 | 東京2020オリンピックでは、金メダルを獲得したGood Winnerであり、銀メダルを獲得したGood Loserでもあった。ライバルたちとの間で見せた立ち居振る舞いは、美しさを競う競技者としてだけでなく、スポーツマン・橋本大輝としての美しさを際立たせた。とくに、ライバルとして競い合ったニキータ・ナゴルニー選手(ROC)とは、互いに理解し合い、尊重・敬意を発揮する姿は感動を超える美しさであった。 「体操という一つの競技だけにとどまらず、全てのスポーツに共通するものがスポーツマンシップだと思います。コロナの影響で制限はありますが、拍手をしたり、人と人とが互いにたたえ合ったり、認め合ったりすることが大切だと思います。演技をしているだけで、言葉がなくても選手同士が通じ合い、距離が近くなるもの。スポーツは演技や競技が会話になるのだと感じます」という言葉にも、スポーツの本質を理解し、それを実践しようとする姿勢が見てとれる。 橋本選手自身、JOCネクストシンボルアスリートにも選出されているように、日頃から高く評価される人間性が、東京2020大会の出来事が単なる1シーンに限ったものではないことを示している。彼の生き様自体が、若き規範であり、ロールモデルとなりうるアスリートの1人である。「オリンピズム」を体現するチャンピオンであり、Good Winner橋本選手には、競技におけるさらなる活躍とともに、若きよきスポーツマンとしての役割も期待したい。 |
和合 由依
テーマ | 片翼の飛行機が演じた「世界のヒロイン」への挑戦 |
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内容 | 東京2020パラリンピックの開会式で「片翼の小さな飛行機」を演じ、一躍、東京パラリンピックの印象的なヒロインとなったのが和合由依さんだった。先天性の障害で両脚と左手を動かすことが難しく、普段は電動車いすを使って生活している。「片翼の小さな飛行機」は、空を飛ぶ勇気を持てず悩んでいたが、実際の彼女は何事にも挑戦を恐れない性格だ。演技未経験ながらも一般公募にチャレンジし、見事に主役の座を勝ちとった。 ハイライトは、演出のクライマックスとなる小さな飛行機が滑走路を飛び立つシーン。最初は「車いすを押してもらう」演出を提案されたが、自ら、手動車いすで走りたいと意志を伝えて採用されたという。本番まで、学校や家で、動かすことが難しい左手を使う頻度を増やして挑んだ。本番では、降り注ぐ雨によって車輪が滑ったそうだが、約20mを自力で走りきった。 世界中の注目を集める、誰もが緊張する場面で、弱冠13歳にして強い「覚悟」と果敢に挑戦する「勇気」を発揮した姿に、多くの人々が感動をもらった。 |
競技 | 演者 |
評価 | 尊重〇/勇気◎ /覚悟◎ |
選考理由 | 演技未経験ながら、東京2020パラリンピックの開会式で展開された「片翼の小さな飛行機」の主役に抜擢された和合さん。先天性の障害で両脚と左手を動かすことが難しく、普段は電動車いすを使って生活しているというが、国際的大舞台での主演という大役に怖じ気づくこともなく、表現豊かに演じ遂げた。彼女が演技する姿は、世界中に配信されたが、多くの視聴者たちに強い印象を残したことだろう。 また、自らの意志で、手動車いすで走り切りたいというあえて難しい挑戦に対して、「覚悟」を決めて挑み、それを実現させた。アスリートではないが、彼女のチャレンジはまぎれもなく「尊重」「勇気」「覚悟」を持ち合わせた「スポーツマン」の姿だった。 |
発起人・川淵三郎氏よりメッセージ
スポーツマンシップを身につけた真のスポーツマンこそが
現代の日本にもっとも必要な存在である。
日本スポーツマンシップ大賞/Japan Sportsmanship Awards
発起人代表
川淵三郎(一般社団法人日本トップリーグ連携機構 代表理事会長)
各賞概要
日本スポーツ界において、尊重・勇気・覚悟に代表されるスポーツマンシップを発揮した中で、最も印象的な個人・団体を「グランp」として、学生など若い世代を対象とした最も印象的な個人・団体を「日本スポーツマンシップ大賞 ヤングジェネレーション賞」として表彰します。
審査委員会
◆審査委員長
中村聡宏(一般社団法人日本スポーツマンシップ協会 代表理事会長/千葉商科大学サービス創造学部 准教授)
◆審査委員
江口桃子(日本スポーツマンシップ協会 理事/アナウンサー)
大山加奈(元バレーボール日本代表)
島田慎二(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ チェアマン(代表理事CEO)
/公益財団法人日本バスケットボール協会 副会長)
高橋勇市(パラリンピアン/アテネパラリンピック 視覚障害マラソン金メダリスト)
益子直美(元バレーボール日本代表)
山中正竹(全日本野球協会 会長)
湧永寛仁(日本ハンドボール協会 会長/湧永製薬株式会社 代表取締役社長)
※肩書きは審査委員会開催当時
<日本スポーツマンシップ大賞2022概要>
名称
日本スポーツマンシップ大賞 2022
目的
当該年度において優れたスポーツマンシップを発揮した個人・団体を表彰することで
スポーツマンシップの正しい普及・啓発をおこなう
開催日程
2022年7月7日(木) 19時00分~21時30分
開催場所
Zoomウェビナー
内容
・グランプリ、ヤングジェネレーション賞の発表
主催
一般社団法人日本スポーツマンシップ協会